東京の上空を飛び交っていたヘリの爆音もいつしか静まって、
大統領はアメリカに向けて帰路の途についたのであろう。
まずは無事故でよかった。おもてなし外交も満点の
成果だった。しかし、このたびのイベントの本旨を理解せず、
大相撲見物まで含めて、こまごまと非難する人たちがいることには
驚かされる。
「トランプ大統領は観光旅行で日本に来られるんですか?安倍首相はそのツアーガイドですか?」と突っ込んだのは立憲民主党の辻元清美・国対委員長であるが、その幼さに絶句する。これで政治家なのか?
外務省幹部の某氏が簡潔に解説してくれているので、その言葉を拝借するが
「米大統領が日本に3泊もする。これでもか、というくらい緊密な日米の姿を見せつけることが、中国、北朝鮮、韓国、ロシアとの関係を考える上で重要だ」
国技館での大相撲見物も、これに尽きる。敵対国に「見せつける」ショーとして仕組まれた。国家の大義を前に、つかの間少々の難儀は辛抱しようではないか、と誰も言わない。ワイドショーでも司会者が不満たらたら。
日本の伝統が、と言うならモンゴル勢に壊された土俵での伝統を
先に言って欲しいものだ。
晩餐会におけるトランプ大統領のスピーチも、令和の典拠となった
万葉集を上げ、大伴旅人や山上憶良にも言及するという意想外の
格調の高さ。誰が書いたとあげつらうは野暮。これもむしろ国外向け「ショー」に用意されたシナリオなのだから。
安倍さんの手腕を褒める人が余りない。しかし、就任前のトランプ氏を
いち早くトランプタワーに日本製のドライバーを持って訪問、その後の
関係性を築き上げた安倍さんの機敏さは称賛に値する。その様子は
世界注視の中、アメリカのテレビCNNが繰り返しオンエアして、
安倍さん自身のアピールの場にもなった。オバマ氏がまだ現職であった時である。安倍さんは軽業師のように、鮮やかだったと思う。
日本が北朝鮮のみならず中東における米国との仲介国としてさえ
存在感を示すに至ったのは、初動を誤らなかった安倍さんの読みのおかげである。
余り褒める人がいないので、書いておく。私が褒めたところで
何の役にもたちはしないが、一国民として感謝の意は示したい。
これも悪口の文脈でしか言われない長期政権であるが、長期経験者の
勘と慣れがあればこそ、各国首脳を退けての一番乗りとなった。
外交において、この長期政権ということは大事な要素である。
今回の見せつけショーでそれまでの「韓日米協力」から、日本と米国が主導する「自由で開かれたインド太平洋構想」にキーワードが取って変わったことも
収穫であったかもしれない。