田中英道先生の著作で知ったことだが、パルテノン神殿も法隆寺も
同じ美の黄金比率で出来上がっているらしい。
ギリシャ、日本共に古代の人々の美的直感の共通項に
息を呑む思いだが、共通でないことは
パルテノン神殿は石で、法隆寺は木で出来ていることだ。
しかるに、堅牢な石の神殿は柱を残して潰え、木の寺は完全な形で生き延びている。
むろん、歴史はパルテノン神殿のほうが遥かに旧いので、同じ地平での
比較はアンフェアだが、おそらく法隆寺はこれから先も延々と生き延びる。
永遠性を夢見て石を積み上げるのが西欧なら、万物いずれ滅びるものとして
木を使う日本の精神性の違いで、滅びると観じて作る日本の建造物のほうが
息が長いというパラドックス。
焼き討ちに合うことが少ないという日本の平和も傍らにあってのことだろう。
日本は永遠を物質には求めない。万物流転の中に実は永遠を見る。
伊勢神宮の式年遷宮。壊しては建て、建てては壊して、また創建する。
生と滅は一体であり、それがすなわち宇宙の法則が指し示す永遠なのだから。
自然と対立しての永遠などあり得ない。
対立構造が西欧の思考と感受性の基礎にあるが、すでに行き詰まっている。
日本は永遠の何たるかを知っている。
世界の立て直しは日本から始まる。