お世話になったプロデューサーの、シナリオ学校での生徒さんが
ある新人賞を取ったというので、作品を読んでみました。
電話であらまし、感想はプロデューサー氏宛にはお伝えしたのですが、
ご本人に直接会ってお伝えしましょうか?
と言ったのは、そのプロデューサー氏の教え子なら、とプロデューサー氏への
恩返しの一端でありました。多大にお世話になった方で、NHK育ちの私を
民放に引っ張ってくださり、「外科医 有森冴子」シリーズを実現化してくださった
方です。
というわけで、雨催いの銀座に出かけたら、某局の街頭インタビューの網にひっかかり、割に知っているジャンルのことだったので述べてきましたが、頭の中でここ使われる、あ、ここカットだな、ここは放送コードに触れる、とか計算しながら喋るので、妙に場馴れしてるなと、思われたかもしれません。職業は訊かれなかったので。カメラマン、ディレクター、インタビュアー含めて感じのいい人たちでした。自分が受けてみると全ての街頭インタビューが、やらせってわけでもないのですね。
銀座には早く着きすぎたので、インタビューで時間が潰せて幸いでした。
プロデューサー氏と、その教え子さんとお会いしたのは和光別館2階のカフェです。教え子さんの当選作シナリオが掲載された雑誌を広げつつ、具体的に指摘していったのですが頭と勘のいい女性で、飲み込みが早くミニ講義も楽でした。
セリフとト書きの基礎は出来ているし、あとは《視点》《切り口》《表現方法》です。
テレビと映画の脚本、小説、戯曲、コミック原作、作詞、エッセーと手がけているのでいろんな分野から例を引いてお伝えできるので、解りやすいようで「教室で学んで、分からなかった単なる“説明”と“描写”の違いが、今回明確になりました」と言って頂けたので何より、お役に立ててよかった。
次回作へのアドバイスもその後、メールで送ったりなどお節介を致しましたが、文芸ものが書ける方なので、応援したく思っています。
新たな作家が誕生しますように。
物書きに限らずどの職業ジャンルでもそうですが、基礎が出来上がれば
悪戦苦闘している間に「悟る」瞬間が、ある日ふっと来ます。何かを掴む瞬間です。
それを経て、本当のプロになります。
越後上布を着て出かけました。プロデューサー氏が奥様から、
「今日は井沢さん、どんなお召し物かしっかりうかがって
来るように」と言われてきたとかで、「越後上布」と
お伝えしました。織り手がいなくなったせいで高騰、現在では
200万円。
私が30年前に、その価格で求めたわけではありません。
値上がりしたのです。
それにしても、スマホ撮影では色目も質感も出ませんね。
着物を楽しみにしてくださっている方々のために、次回からは
デジカメを使いましょうか。
この越後上布をまとうと、鈴木清順監督が忍ばれます。
というのは、初めてこの映画における美意識の作家にNHKでお目にかかったとき、越後上布を着ていたのです。
雨上がりのNHK西口玄関前は、水たまりが出来ていて清順監督が私の着物の裾を気遣ってくださったのですが、その時の情景も監督の表情も声も語り口も、監督が撮る映画の1シーンを見るように鮮やかに覚えています。
どこを気に入ってくださったのか、私の家まで遊びに来てくださったり、楽しい時間を何度か共に過ごさせて頂きました。下町育ちでさっぱりしたご気性であり、交わりも淡々としていて、それもいい記憶の理由でしょう。
人間、近づき過ぎていいことはありません。
名作「肉体の門」の新作版のシナリをを清順監督から所望されましたが、企画がはかばかしく進まずそのまま終わってしまったのが、残念です。
清順美学に脚本を捧げたかった・・・・・。
去ってなお慕わしい方がいるということの幸せ。
誤変換他後ほど推敲致します。