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Channel: 井沢満ブログ
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見る側の知性

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深夜のテレビを何気なくつけたら、始まったのが「ヤング・ポープ 美しき反逆児」というドラマ。無聊をかこっていた時なので、見始めたら何やら物凄まじいまでの
グレードの高さ、作りての志の高さ。

見浸っているうち、「続く」の文字に愕然。実はこれが連ドラの一話なのだとその時に
知ってまた愕然。

その重厚さから映画だとばかり思い込んでいたのだ。それに、見るものにこれだけ知性と知識を要求する作品は映画だってめったにありはしない。
もっとも知識に関しては、キリスト教圏の人々はすでに承知のことばかり。
日本人にとっては、じゃっかんのカトリックに関する知識が必要であろう。

全10話。レーゼドラマに近い会話劇で、これといっためぼしい出来事は
最小限に、神とはなにかというテーゼと、教会という組織が必要悪として持つ澱みとの拮抗が深い言葉のやりとりで描かれる。若く美しい法王の長台詞も文学の
一部を切り取った如き趣き。

バチカンでの撮影がどこまで許可されたのか分からないが、よく撮っている。
もし、全編バチカンが許諾したとしたら何とまあ、懐の深いこと。
ドラマに興味を持っていたヨハネ・パウロ二世聖下の頃ならいざ知らず。

ちなみに、ローマ教皇への尊称は聖下、枢機卿へは猊下である。
ダライ・ラマ法王への敬称は猊下であるが、どちらが上ということはなく
一般にはファジーな使い分けであろうが、ローマ法王に関しては
聖下という言葉は覚えていたほうがいいだろう。

原題「THE YOUNG POPE」の残り9話分は会員になっている有料サイトで
2日間を費やして連続で見た。見終わって画面に拍手することはめったに
ないのだが、この作品には、した。

こんな知的水準の高い作品がアメリカの衛星放送で流され、しかも
シーズン2が制作されるということは、それなりの評価を受けたのだろう。
愕然とするのは、日本と比べてのことだ。

シーズン1の若き法王はジュード・ローが演じ、倨傲と敬虔、野卑と品格、
矛盾に満ちた法王像を繊細に大胆に表現して見事。長い長いセリフも、
自家薬籠中のものとして流麗。

修道院に棄てられた孤児であるアメリカ人の若者が、法王として
コンクラーベで選ばれるという突拍子もない設定だが、
上手に描いているので不自然ではない。

日本にこの知的グレードの高いドラマが理解出来、楽しめる層がいないとは
思わない。だが、そこを目掛けて放つ制作陣がいず、局がない。

ヤング・ポープにいっさいの視聴者への媚や、低レベルの視聴者に
向けてのくだくだしいサービスもないが、かといって娯楽性が
ないわけではない。その質の高い娯楽を楽しめるかどうか見る側が
問われているだけだ。

 

'The Young Pope', first trailer

 

海外ドラマ『ヤング・ポープ 美しき異端児』(予告) ジュード・ロウ×ダイアン・キートン競演

 

 

私がひときわ興深く感じ入ったのは、ヨハネ・パウロ二世への謁見が思いがけず叶い、握手と短いながら言葉を交わしていただいたこと、バチカン内の一般が立ち入れない場所も厠に至るまで、神父の案内で見せて頂いたことからでもあろう。
ドラマで描かれるサン・ピエトロ広場での熱狂も肌で知っている。

ローマに赴いた折、むろんバチカンも訪れたのだが、人の行列の長さに臆して立ち入ることは諦めた。よくあんな世界中から人が押し寄せるところの、奥まったところまで入れたものだと今更ながら、その僥倖をありがたく思う。
僥倖といえば皇居内部もほぼ隈なく歩かせて頂いたし、ダライ・ラマ猊下の亡命政府にある寺院でのチベット仏教での法要にも参列させて頂いた。幸運な一人であろう。

 

*無聊を託つ(ぶりょうをかこつ)
手持ち無沙汰で退屈なさま。また、そんな状況を嘆くこと。

*自家薬籠中(じかやくろうちゅう)
自分の薬箱の中にある薬のように、 思うままに使える物、または人。

 

誤変換他、後ほど。


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