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Channel: 井沢満ブログ
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ビルの谷間の小公園で

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早朝、ビルの谷間の小公園のベンチに腰を下ろしていたら
話しかけて来た人がいて、見るとこの間私が
ベンチに置き忘れた財布を保管してくださっていた
向かいのビルの管理人さんでした。といっても、
ひょっとしたらビルのオーナーに近い人かもしれず、
そこらへんは、解りません。

話の辻褄から70歳ぐらいだと思われますが、ひっきりなしに
タバコを吸われ、昔は5,6箱を灰にしていて現在でも
3箱の喫煙者でいらっしゃるとのこと。

肺を検査しても無問題なのだそうで、特殊体質なのでしょうか。
しかし聞けば数年前に大腸を取ってしまったとのこと。
歯は全部なく、入れ歯にしたのだが食べ物がまずいので
外してしまい、今は歯茎で召し上がっているとのことで
「大丈夫なんですか」と訊いたら、歯茎が固くなり
歯の役目を代行するので無問題だとの返事。

死ぬのはちっとも怖くない、とめったにその点では
話の合う人に巡り合うこともないので、しばし
歓談していたのですが、ずいぶんやんちゃな人生を
送っていらしたようで、サラリーマン時代には
タイム・カードを押さないことを条件での入社だったそうで、
理由を問えば「何時から何時までと、時間を切り売りする勤め人には
俺はならねえ」ということでした。

社長にはなれねえ、と思い知ったところで辞職、
「国税局にはなにも言わねえ。墓場までこの会社の秘密は持っていく。
その代り退職金ははずめ」と当時で1億からのお金をせしめたのだが、
「競馬で全部使っちゃった、あはは」

親の遺産を食いつぶしつつ、今まで失った家4軒、別れた女房3人、だそうで
そこまで好き放題したら、いつ死んでもいいやというのは解らぬでも
ありません。

朝6時半に開くという、450円モーニング付きの喫茶店を
教えてくれ「俺、毎朝行っているからおいでよ」と地図を書いてくれたのですが、
いったん家に帰ったら再びの外出が億劫で行かずじまいです。

ホームレスを助けてご飯を食べさせ、住所がないと就職が出来ないからと
小遣いを与え自分の家に住まわせたが、いなくなっちゃったという話も
聞きました。

同じく、やんちゃ仲間の友人が末期ガンで家族の助けもないところを
自分が病院に掛け合ってホスピスに移し「先生、俺絶対、訴えたりしないから
モルヒネ二倍にしてくんない? あいつの苦しみが見ていられねえんだよ」
と頼み込み、友人はそれから一週間で逝ったのだが、
「俺が帰るというと、そいつ俺の手を握って帰らないでくれって離さないんだよ」
葬式まで出してお骨は、友人の兄弟に渡したそうです。

早朝、まだビルの谷間に日が射さぬ前の束の間の会話でしたが、色濃い
時間を頂いた気がします。

 

誤変換他、後ほど。


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