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Channel: 井沢満ブログ
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映画のはしご 久々

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所用で銀座に出かけた帰り、カップや皿に
ロイヤルコペンハーゲンを使っているので
気に入っている椿屋に立ち寄り、ふと
思い立って、近くのTOHOシネマズに
向かった。

たまたまちょうど始める映画が「プーさん」(正式タイトル失念)
だったので観た。
予告編のときから愛らしく、観てみたいと思っていたのだが、
途中で眠った。目が覚めてから、筋書きを追っているうち
このまま眠っていたいなあ、と思った。残念。
せめて英語の勉強をと、ダイアローグに耳を澄ませた。

そのまま帰ろうかと思ったのだが、口直しにもう一本観ようと
プログラムを見たら、またちょうど始まるのが「クワイエットプレイス」で
これは退屈はしなかったが、口直しまでには至らなかった。

ヴィスコンティの「ベニスに死す」は、配信サイトで見てその完成度に
言葉を失くした。
と言って、この映画が一般にさして評判がいいわけではない。その質の高さに
比して、という意味だが。各国の賞は複数得ているし、封切り同時
話題にもなった。

この映画はとりわけ感受性と知性に優れた人は除くとして
60歳を過ぎないと本質は解らないと思う。
自分がそうだった。封切り時から何十年も経て、やっと
その輝きに気づいた。初見のときは、冗長だと
感じた部分の1シーンごとに必然性と心情が込められていて、
ああ、こういう映画だったのか、とその放つ光芒をようよう感知、
長く生きていて、よかったとこういう時には思う。
凡才は長生きすべし。

トーマス・マン原作のこの映画の大筋論はいずれかの機会に譲るとして、
衣装と花の見事さ。
何という豪奢、美意識。
それぞれ無論専門領域の人がついているのであろうが、
バイセクシャルであったヴィスコンティの繊細な感性が
画面の細部にまで行き渡っている。

初見の時は、悲劇で幕を閉じたかと思い込んでいたのだが、
愛しい妻も子もあった大作曲家が15歳(映画では)の
少年への片恋に最後の命を燃やし、美に準じた、実は至福の物語ではなかったかと
感じ入った。

全編を流れるマーラーの素晴らしさ。

そういえばイタリア話題で思い出したが拙作「ジョージィ」のアニメ版の
衣装を参考に、衣服がデザインされ売り出されるようで面白い
成り行きである。イタリア特有の美的感性でいい衣装が仕立て上がれば
素敵なことだが、ものぐさで人にまかせっきり、詳細は知らない。


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