しばらく映画を観ていず、酸欠状態だったのだがラインアップを見ても
「これ、観たい」と即決出来る作品がなく、駄目で
元々と出かけた「キングダム」がめっぽう面白かった。
アクションや中国史劇のコスチュームプレイが苦手で、
冒頭うつらうつらしていたのだが、だんだん目がさめて
映画を堪能出来たのは、山崎賢人と吉沢亮両君の存在が大きい。
山崎くんは、毒のないすこやかな青年のイメージで
さしたる印象を抱いてはいなかったのだが、この作品では
野卑で喧嘩っ早い青年を頑張って演じている。演じながら
彼の地であろう品の良さがちらちら垣間見えるのだが、
欠点ではない。
特筆すべきは吉沢亮くんの美しさと妖艶さでスクリーンに
大写しになった時は驚いた。
「銀魂」を観た時は出ていることも今回知ったくらいで
印象になく、映画の宣伝のためにテレビに出ていた時も
顔も憶えていなかったぐらいだから、今回の吉沢くんは
作り上げた役柄を通しての優美で色っぽい輝きなのであろう。
中国の春秋時代を舞台にしたフィクションであり、史実を
詮索しても意味がないようだ。スクリーンには
男ばかりで珍しいなあと思っていたら、男だと思わせていた
山の民の首領が長澤まさみさんで、この人のアクションと
存在感も楽しかった。男しか出ないので、史実に敢えてそむいて
女性として置き換えたのだろう。
高嶋政宏くんは重厚な武将役で、成熟した演技を見せてくれたのだが
友達付き合いの人が(CMもそうなのだが)実生活の顔を知り過ぎている人が
別人になって演じていると、なんだかムズムズして落ち着かない。
三田さんがしきりにコマーシャルに出ていらした頃、やはり照れくさかった。
と、御本人に申し上げたら「家族が出ているような、身内意識なのよ」
とお返事で、そういうことなのだろう。
「キングダム」でもう1人印象が強烈だったのは、大沢たかおさんが
演じる将軍で、これが口紅でもつけているのではないかと思われるくらい
メークバッチリで、何とも不思議な人物造詣。原作コミックが
そのように描いているのかと思ったのだが、後に調べた所によると
映画独自の人物造形だったようで、監督の指示なのか
大沢さんのオリジナルなのか知らぬけれど、とても気味が悪く
(褒め言葉である)厚化粧の顔で「んふ」と笑うのである。
そして武に長けていて人をあっさり殺す。そして「んふ」と笑う。
夢に出てきそうである。大沢たかおさんも、只者ではないなあ。
病みつきになりそうな人物像を作り上げた腕前。
中華統一をもくろむ若い王(吉沢)と、その王を助ける青年(山崎)の
物語だが、もし中国で上映されたら反応がどうであろう。
思いもよらぬ観点から上映禁止にしたり、シーンをカット
する国なので、予想がつかない。
それにしても、劇中の王が存命なら天安門から現在に至る中国を見て、
どう思うであろう。中華統一は果たして実現しているのだろうか。
多言語数カ国の集合体のように現在でも見えるのだが。
表から見えるほど、盤石の統一国家ではないように思う。