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Channel: 井沢満ブログ
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淫蕩の町

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昨日、伊勢海老を用意してくださったお宅でお昼を頂戴し、その後

そちらのご夫婦と3人で、浅草へ繰り出した。

藤棚のある初音小路が目的で、想像していたとおり

何やら頬を隠微の風がなぶって吹き抜けるような小路であった。

簡便な食堂が店を連ね、表にもテーブルが出ていて、

ちょうど競馬の時間帯で男たちが鉛筆と新聞片手に

昼酒を啜り、また立って焼きそばを食らう女、テーブルに肘をついて

かっ食らう男あり、ここではさして気にもならず多文化共生とやらも、

このエリアでは可能な気がした。

私はどうやら絶対的に民度や文化度を落とす他民族を

排斥したいわけでもなく、それはそれこれはこれで境界線を

設けて暮らしてくれるならそこはいかがわしさの魅力のある街にも

なれるのかもしれないとも思う。おそらく犯罪と裏腹の地域になろうが。

私が嫌なのは、他民族が入り込むことで、ただでさえ敗戦以降

品が落ちる一方の日本人の言葉遣い仕草などが、平均的に更に落ちることなのである。

日本という良貨を外国の悪化が駆逐する状態を忌む。

初音横丁を抜けて暫く歩くうち、男物専門の和服店を見つけ、

入るとアンティーク、新品の両方、品揃えのレベルが高いこと尋常ならず、

聞けば創業以来60年の老舗であった。

女主の見立てがさすがで、私が目をつけた着物を一瞥するなり、

「これはサイズ大丈夫です」と言い、まとうと身に吸い寄せられて、仕立てたようにしっくり。

結局着物2枚と羽織1枚求め、更に京都で織られた金糸がほのかに縫い込まれた帯を買った。

藤色の羽織の裏地は、江戸女の湯浴み姿で艶かしいが、

これとて人に見せるわけではなく、ただひっそりとまとうだけである。

昨今、海外に仕立てに出す所も多いが、こちらの店は

上野にある仕立屋に出しているとのこと。

男主は、長襦袢の色々を広げ見せてくださったが、いずれも秀逸。

きっとここには一生通うことになりそうな。

そうこうするうち、和服をまとった中年男女が現れ

見るからに着慣れて趣味が良い。

男性の持っている和物の手提げが欲しくなったので、探そうと思う。

あと、鳥打ち帽。インバネスに合わせたい。

昨日は、以前頼んであった藤色の着物と紫の長襦袢も郵送されて来たが、

届いてすぐ出かけたので、まだ荷解きしていない。

一気に衣装持ちになった日だった。

浅草は和装が目立つ。その日レンタルの店もあるそうで、顔立ちの整った若い男も、

華やかな和装の若い女3人ほど引き連れ、いい身なりで闊歩していて、

これで人力車など乗れば一気にタイムワープだろう。

人力車のお兄さんたちも、江戸前の気風の良い喋り方をいて、楽しい。

デジカメを持ち歩く習慣がなく、持参しなかったのが残念なくらい色々な風景に出くわした。

藤色の羽織に悩み、人任せにしたら女物だが薄紫の江戸小紋(極鮫)で裏が淡い朱は

どうだと訊かれ、それでお願いしますと答えたのだが、更に提案があり、

千筋の青鼠はどうかと。面白いと思って即、お願いした。

 

浅草はこの世を去る前の十年間ほど、住みたい町である。

晩年は自然を志向する人のいるのだろうが、私は雑多な人の賑いの中にいたい。

しどけなく、ほどけて暮らせる町である。

 

注 

千筋 せんすじ

色違いの縦糸を4本ずつ配列して織った細い縦縞。


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