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Channel: 井沢満ブログ
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三社祭の日、浅草に大衆演劇を見に行った

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浅草や人形町は昔は苦手、出来れば足を踏み入れたくないエリアで、
三田佳子さんが、人形町近くの明治座で芝居をやられると、重い足取りで訪れ、
界隈の空気を吸わないように、というのはオーバーだが心理的には、一刻も早く
そそくさと立ち去りたいエリアで、浅草も同じくだった。

それが今は、好きなエリアになっているから、分からないものだ。

浅草は、不思議な三叉路や十字路があって、さだめし昔は三方、四方に延びる道を
辿ればいつしか、迷宮の入り口、隠微で不思議な世界へ迷い込んでいたのであろうと
思われる。

浅草は木馬館が目的で、大衆演劇の研究家でいらっしゃる橋本正樹さんに
ご案内頂いてうかがった。
もう30年ほど前になるのだろうか、朝のテレビ小説で「いちばん太鼓」というのを
書いたが、それが大衆演劇の世界を描いたもので、橋本さんには考証でその時、
お世話になった。

「いちばん太鼓」は小学館から小説としても出し、その中の文章の一節が初めて
高校の国語の入試問題になり、その後も問題集に長いこと載り続けている。

木馬館の入り口で橋本さんと落ち合い(三十年ぶりである)、チケット代をお支払いしようとしたら、座長の招待ですとおっしゃる。恐縮しながら木馬館に入ると、おもちゃ箱をひっくり返したような
雰囲気の小さな劇場。

さて開演。皆さん達者である。大衆演劇は、台本は通常なく「口だて」と言って
座長が口で説明、そのままさくっと舞台に上がる。勘と経験の世界であろう。

大衆演劇の世界では「スーパー兄弟」としてファンの多い、三代目座長・南條隆と
総座長・龍美麗一座である。

フィナーレで、客席に向かって投げられたティッシュ。
左が兄の流美麗さん。右が南條隆さん。平成2年生まれ。

梅沢富美男さんの舞台を見に行き、楽屋に伺って舞台と素の落差は
慣れっこであるが・・・

これが素顔のご兄弟。

 

舞台がはねた後の飲み会に、ちょっとだけ顔を出してくださった。

お二人が現れると、いい年齢の男子が「ドキドキする」と口々に
言っているのが、面白かった。何に対してのドキドキかわからない。
おそらくそれまで見ていた、あやかしの世界のヒーローであり
ヒロインであった人が、現世に現れるときの高揚感か。

左の流美麗さんは前半の芝居「関の弥太っぺ」で主役の弥太郎を男っぽく演じ、
二部のショーでは、艶やかな女形。この落差が凄い。
女形の動きをどうやって舞うのか、詳しい方に訊いたら「自分の理想の
女性を描くのです」だそうで、なるほど。では型だけかというとそうでもなく、
心も女性に寄せていく人もいるというから、面白い職業である。

私なども脚本で女性を書くときは心理的女形になっているから、そこら辺の
感覚は解らなくもない。女になりつつ、しかしなりきらず、覚めて客観的に
計算しながら、しかし冷静になり過ぎず、情を保ちつつ演じている(書いている)という感じ。

 

面白いことには、女優が舞っている時より女形の舞いのほうが
華やかで艶めいているのだ。天然素材のままで踊る人より、
性を「創作して表現する」ほうが、インパクトが強いようだ。

踊りの振りは、その時々のアドリブだそうで定形はないという。
お札を握りしめたファンが舞台に近づくと、さりげなく
かがみ、お札をピンで止めてもらうと、また自然に
踊りに戻る。

ピンはいずれも、キラキラがお約束のようで、髪を留めるピンだそうだ。

封のある札束なんか、胸に飾って見えないからつまらないのかな、と思ったら
差し出す人もいるようである。

 

こちらは一座の役者さんではなく、外部の劇団の花形座長さんだそうで、
客寄せに助っ人に来て、ギャラはこういうおひねりで、まかなうのだそうだ。

扇に開いた10万円の花が、3つは開いていたような気がする。
お札が胸につけられると、自分が貰ったわけではないのに
妙に昂揚するのは、なぜだろう。こういう場でのお札ってセクシーなのだ。

誕生日などは、おひねりを出す人の列ができ一公演で、サラリーマンの
年収分になるという。

が、照明の費用、衣装他で消えてしまうという。

寝起きは舞台の上。女性陣が楽屋。

入場料1600円。前売り1500円。安すぎると感じるほどに、これでもか、
これでもか、とサービスにこれ相務めて演劇の原点のような、熱気を
感じて、刺激になった。
上がりは6:4で劇場が6,一座が4と聞いた。 


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