昨夜、弟と飲みながら食事したのですが・・・・
日本酒は弟がぬる澗派なのです。私は昔、相撲協会の偉い方に、お酒は冷たいの飲んじゃだめだよ、内臓を冷やさないようにね、と言われたことをずっと守っていて、飲むのはほぼお燗の日本酒なのですが、熱燗派です。
氷で冷やしたのでなければ、ぬる澗でもいいのですが熱澗を放っておいたら自然にぬる澗になるのに? と口に出すほどのお酒音痴ではあります。
弟に、沸騰させたお酒と最初からぬる澗のお酒とは違うよ、と言われ、そう言われてみればその通りで、しかしお酒の味はほとんど解らない人間なのです。
そういうことで、お店の人に、
「ぬる澗でね」
と言ったら、は? という顔をされ、
「常温ってことなんですか?」
と聞き返され、弟が脇から、
「人肌って言ってもわからない?」
すると、
「ヒトハダ?」
いったい、幾つぐらいから「ぬる澗」も「人肌」も通じない世代なんですか?
お酒はぬるめの 燗がいい、という歌ももう知らない世代が現れてるのですね。
何歳ぐらいまで「ぬる澗」が通じます?
お店では二十代、三十代の店員さんに訊いてみたのですが、双方通じませんでした。
若者はお燗と冷酒しか、語彙がもうないのですか? 「冷やで」は通じます?
各世代の言葉を書き分けねばならない私としては、切実な疑問です。
最近「きゃわたん」という言葉を憶えたばかりですが、こんな流行り廃りの激しい若者用語をまずセリフには書かないし、書いても特殊な意図があるとき以外は、一般視聴者には通じないので書きません。
しかし「ぬる澗」「人肌」を使えないのは、困ります。ある世代を描くときには、必須用語ですが、その言葉の説明をさりげなくセリフで、フォローしなければならなくなりそうです。世代差を描くときは、かえって使えそうですが。
アラフォーの女と、二十代の男の恋物語を考えている最中ですが、これ使えるかも。アラフォーが「ぬる澗」「人肌」を知っていれば・・・ですが。
ヒロインが下町で育った江戸っ子設定なので、大丈夫かな? 恋の相手を寿司職人設定にしたいので、彼がぬる澗、人肌を知らないのは不自然か・・・。使えると思ったのに残念。しかしいつかセリフに書こう。
お酒ですが、お銚子を持てないくらい熱いのが来てしまいました。
それで、今度は、
「体温より、ちょっと高めくらいにして」
と頼んだら、ぬる澗が無事来たのでした。
のど黒を食べに通いつめた店です。刺し身、開き、焼き、煮と食べ続けていたらいつしか飽きて、昨晩食べたのは鯛の焼き物とお造りです。魚の名前も憶えなければ‥‥‥・・と思いつつ、何だか聞いたことのない鯛の種類で、焼きもお造りも、違う種類の鯛でした。
植物の名、色彩名、憶えなければと何十年思いつつ、どうも怠惰です。
余談ですが、お酒を温めるのは日本だけかと思っていたのですが、豪州メルボルンに暮らしている頃、暖炉の脇にビールを置いて温めて飲む、飲み方を覚えました。英語で特に名詞としてはなかったように記憶しています。
ぬる澗だの、人肌だのという言葉を持っているのは、日本だけかもしれません。喪うの惜しいのですが。
外国人に売り渡した土地と同じで、失くした言葉は二度と戻っては来ません。