脚本を掲載して頂く「ドラマ」誌に、情報解禁のお知らせメールをしたら
解禁と同時にあちこち、早速ニュースが出回っているという
返信だった。
脚本では、向井理くんの息子と長塚京三さんの父親に殴り合いの
ケンカをさせたく、少々難しかったが何とか壁を乗り越えて
書けた。
画像は著作権的に少々どうかな? だが宣伝期間中なので
お目こぼし頂くとして・・・・。
以下、ブログ読者様へ日頃のお礼を兼ねてサービス。
脚本の一部分である。
◯リビング
一歩と、武士(たけし)の二人きりである。
武士「これからどうするんだ?」
一歩「どうって?」
武士「浮草みたいな暮らしも、そうは続かんだろう。いずれしっかりした仕事に就かないと」
一歩「出世もゼニも要らねえ、って言わなかった?」
武士「言った。しかし今のままじゃ、所帯も持てんだろう」
一歩「持っても途中で投げ出しちゃしょうがないし」
武士「オレのことはとりあえず、おいといてだ」
一歩「凄く入りたい会社があったんだ」
武士「試験落ちたのか」
一歩「面接で落とされた」
武士「え」
一歩「言いたくないけど、オヤジがいないせいだ」
武士「そう言われたのか」
一歩「言われないけど。お父さんはどこの料亭で働いてるのかって訊かれて、つい口ごもっちゃったんだ」
武士「今どきそういうことで、落とす会社はねーだろ」
一歩「言い切れる?」
武士「能力が秀でてりゃ、親はなくとも、世の中は拾い上げる。オレはそうだった」
一歩「腕一本の仕事と会社は違うよ」
武士「やる気の無さを、オヤジがいないせいにして、逃げてるんじゃないのか?」
一歩「はぁ!?」
武士「自分に言い訳するような生き方は止めておけ」
一歩「おふくろは離婚もしないで、毎日家掃除して守って、布団干して! ほの香は、結婚相手にも本当のこと言えず、苦しまぎれの嘘ついて。家族それぞれが、どんだけ!!」
武士「オレがオヤジに死なれたのは、三つの時だ。それでも、へこたれず仕事した。所帯も持ち、二人の子もなした」
一歩「捨てといてよく言うよ!」
武士「(瞬時見つめていたが、挑発する)女々しいやつだな」
一歩「はぁ!?」
武士「オヤジがいねーくらいで、何をくどくど。自分の半端な生き方を、オヤジのせいにして満足か。そういうの、卑怯者って言うんだよ」
一歩、はじかれたように立ち上がり、武士を不器用に殴る。
武士、一歩を鮮やかに殴り返し、一歩は見事に吹っ飛ぶ。
起き上がり、武士に獣の吠えるような声を上げ突進、むしゃぶりつく。
もみ合う。二人の感情の背後には、永遠の別れを目前にした親子の気の昂ぶりもある。
鯛子と、ほの香が現れる。
鯛子「一歩!」
ほの香「お兄ちゃん!」
一歩、武士を殴る。倒れる武士。
一歩、馬乗りになる。
鯛子「一歩、やめなさい、何してるの!!」
一歩「親に捨てられた子供の気持ちが、分かるか!! 世界中から突き放されたみたいに、寂しくて、心細くて!!」
ほの香「(一歩の感情に呼応するように、涙が噴き上げる)」
一歩「親に棄てられた子って、生きていく自信も失くすんだよっ。お前は要らねえ子だって言われたんだから!!」
鯛子「そうじゃないのよっ!!」
一歩、武士を殴る。
一歩「まだ、胸の中に、子供のオレがうずくまってるんだよ。オヤジの名、呼びながら、泣き続けてるんだよ、あんたに、わかるか、わかるかっ!!」
ほの香「お父さん、抵抗してないじゃないのっ!!」
武士「(打たれるままになっている)
一歩「やり返せよっ!! なに、黙って打たれてんだよっ!!」
馬乗りになっていた一歩、離れて床にへたり込む。
ほの香、台所へ走る。
一歩、泣きながら部屋の外へ。武士は、胸元もはだけ帯はズレ、滑稽なような無残なような状態になっている。