「わが家」脚本より 一部抜粋
一歩「(鯛子に)なんで、住所聞いてないわけ?」
鯛子「そうね。聞いておけばよかったわ」
一歩「ひょっとして、死んじゃったとか?」
鯛子「―――」
ほの香「人が結婚するって時に、そんな話!」
一歩「気になるだろ!」
ほの香「だって、お兄ちゃん、お父さんは(許さないって)!」
一歩「(語尾食って)けじめの、問題!妙なことになってて、後でトラブったり、そういうの(困るし)。長男のくせに、親ほっぽっといたとか言われるし」
ほの香「お父さん独りでいるのかな。誰かと一緒にいるんじゃないかな」
一歩「(虚をつかれ)え・・・・」
ほの香「お母さん?(と、促す)」
鯛子「(頷く)」
一歩「女、いるわけ!?」
鯛子「随分若い人らしいけど」
一歩「はぁ?なに、それ!?」
ほの香「そんなに驚くこと?普通だよ」
一歩「お前の普通って、なんだよ!?」
ほの香「あたしは平成生まれ。お兄ちゃん昭和。価値観、違うんじゃない?」
一歩「(むきになり)自分だって!昭和と平成が入れ替わる年の、たまたま平成側だっただけじゃん!(と、ほの香の足を蹴る)」
ほの香「痛っ(蹴り返す)」
二人、少年少女期の兄妹に感覚がワープしている。
一歩「本気で蹴った!? お前、本気で!?」
ほの香「すぐ、むきになる。うざ~」
一歩「はぁ!?」
ほの香「はぁ、しか言えないの!? ボキャブラリーないの!?」
一歩「はぁ!? 誰のためにわざわざ家に(帰って来たと)」
ほの香「(語尾食って)頼んだわけじゃないでしょ!」
一歩「お前なあ!」
ほの香「なによ!」
鯛子「うるさい!(と一喝)」
一歩・ほの香「・・・・」
一歩「おやじが出てったの、女が原因なの!?」
鯛子「違う。出てってからよ、女の人出来たの」
一歩「じゃあ、なんで出て行ったわけ」
鯛子「独りで考えたいことがあるって」
一歩「はぁ!?考えるって、何を。二十年も考え続けてるわけ」
ほの香「子供は?お父さんに、私たちの他に子供はいないの?」
一歩「え!?」
鯛子「いないと思うけど」
一歩「子供!?」
ほの香「だって、女の人と暮らしてたら」
鯛子「子供はどうかしら」
一歩「もしいたら、オレたちの弟か、妹?」
鯛子「そうね」
一歩「勘弁してよ。遺産の問題とか、そういうの」
鯛子「そんなもん、この家以外にありゃしないわよ」
一歩「電話番号以外になんか、手がかりないの?」
鯛子「仕事先なら聞いてるけど。甲府市内のホテルの厨房」