まず「君の名は。」
中高生が感涙にむせぶツボを押さえた作品で、絵柄も精緻で
息を呑むシーンがありますが、大人がわざわざ映画館に
足を運ぶ映画ではありません。
DVDで十分でしょう。物語はつまらなくもないですが、さして
面白くもありません。大人には。
男女が入れ替わるという昔からあり、昔から受けている設定に、
奇抜な要素を加えたのが手柄でしょう。
定番で受ける「ロミオとジュリエット」を沈む船に乗せて
大ヒットした「タイタニック」的構図です。
昔から受ける要素に、新たな衝撃的設定を加えた、という点で。
「君の名は。」の男女入れ替わりは、中高生には目新しい
のかもしれませんね。
ネタバレしないように、新機軸の設定については記述を避けています。
映画好きの知人と、私の感想が3点とも一致していました。
1 アニメである必然性が希薄。実写でも良い設定と物語。(無論、趣味嗜好で語ればアニメならではの、テイストがあるのは解るのですが、ジブリの幾つかの作品のように、これはアニメならでは、という要素がないのです)
2 主人公の男子の顔がチャーミングではない。(これも、ジブリと比較すれば、とりわけ恋愛もののアニメは、女子が感情移入できる男の顔をしていたほうがいいのですが、その点でどうなんだかな、というのが知人と期せずして一致した意見でした。男の子としての色気がないのかもしれない。ふとした、しぐさも)
3 懐疑的な意味で、「海外で通用するのかな」というのも共通でした。世界観が平板なのと、ロジカルでなく心情で謳い上げるたぐいの作風なので、まあどうなのかな、と。これは蓋を開けてみねば、解りません。
・・・・・以上、突き放し気味の客観感想なので、趣味にはまれば大人でものめり込んで観られる作品なのかもしれません。私が脚本を手掛けた「君の名は」と同タイトルですが、すれ違いの要素が「君の名は。」と句点付きの映画でも、特徴です。
「シン・ゴジラ」
大変、大変、意外な作品で、終わった時私はスタンディング・オベーションをしたくなりました。
まず娯楽作として、冒頭から緊迫感でグイグイ押してきます。
更に、意外なというのは、これは作者の国防観、外交観、対米観が
確立しているせいでしょう、娯楽の衣の陰からちらちらと思想が
ほの見え、セリフの幾つかが際立っています。
「核が、最大の防御なんだ」
「戦後ずっとアメリカの属国だった。今も日本はそうだ」
「アメリカは無茶を押し付けてくる」
「自国の利益のために他国の犠牲を強いるのは、覇道です」
「先の大戦では、旧日本軍の希望的観測、こうあってほしいという願望により、国民に三百万人もの犠牲者が出ました。油断は禁物です」
他、メモを取ってないので正確ではありませんが、これでもか
と耳を撃つ、鮮やかなセリフが大娯楽作品の中に、密かに
縫い込まれています。日本の政治家批判もさらっと、入っています。
国想うあなたには、ぜひ見て頂きたい作品です。
エンターテインメントとしても極上ですが、プラスアルファが凄い
作品です。
自衛隊の全面協力を得て、描写がリアルです。
3.11以来、身を捨てての自衛官の方たちの姿に
偏見も急激に少なくなっていますが、ゴジラで国民のコンセンサスとしての
自衛隊肯定が結実したという感じです。
かつて学校の教師にも、自衛隊員の子供に向かって
「お前の親は人殺し」呼ばわりした、という人非人がいたと
仄聞します。事実かどうか知りませんが、似たような雰囲気は
あったでしょう。
世界情勢も剣呑で、いよいよ自衛隊の重要度は増すばかりです。
安倍総理は、よく国会で議員たちにエールを呼びかけてくださいました。
ちなみに映画の中の女性防衛大臣は、稲田朋美氏のような、普段の愛国的大言壮語はどこへやら、自らが要職について、敵からちょっと胸をつかれたくらいでへたって泣き出すような、あかんたれではありません(と、つい映画を観ながら思ってしまったのです。あの、トンチンカンな悪趣味のファッションセンスと共に) もっとも映画では総理はじめ閣僚は安全圏に脱出して、残って指揮を取り戦うのは、普段は二番手三番手の人たちなのですが。
脚本・監督の庵野秀明氏、監督・特技監督の樋口真嗣氏、主演・長谷川博己氏にそして全ての俳優とスタッフに、賛辞の拍手を惜しみません。
エンディングのタイトルロールで流れる音楽も耳馴染みのあるゴジラの
テーマを取り入れながら、壮麗な交響曲に仕上がっています。
音楽は鷺巣詩郎氏。
世界規模でメガ・ヒットすると思います。
ただ、嫌米ではないのですが広島長崎への原爆投下批判が
セリフの端々にあるので、アメリカでは微妙な部分があるかもしれません。
しかし、賛辞も公平にあるので(その意味でも凄い世界観の映画だと
思うのですが)、圧倒的娯楽性にきっと拍手喝采だと思われます。
ひところ、韓国映画に勢いを奪われた格好でしたが、このところ息を吹き返してきたようで嬉しく思います。
それと、作品が終了してもしばらくは明かりをつけず、暗がりにしてくれていた映画館の心遣いに感動しました。
ふだんは退屈なエンディングロールも、出演者スタッフ、おびただしい関係者への感謝の念で、流れ行くお一人お一人の名前を拝見しました。
「わが家」で、向井理くんのガールフレンド役をやってもらった市川実日子さんも出演しています。防衛大臣は「花嫁の父」に出てもらった余貴美子さん。濃い化粧と長いつけまつげは、三原じゅん子議員をイメージしたのかもしれません。(貶めではありません。着物はきちんと召されるし、稲田大臣のような、悪趣味なけばい格好はなさらないし)
珍しく、本当に珍しく映画館で見たほうがいい映画だと思いました。
初めて、そう思ったかもしれません。DVDで見ても、私は脳内で画面を拡大、音量はイメージで無意識にヴォリュームアップして見るので、何ら痛痒は感じないのですが、「シン・ゴジラ」のは、劇場で観て、よかった・・・・・と思ったのでした。
誤変換その他文章の瑕疵は後ほど、推敲致します。