ピアニストも、寿司職人も、バレリーナも1日練習を怠れば
その分、技術が退化するといいます。物書きだけが例外ではないと
思われるので、数行でも言葉を綴ることをしようと思っているのですが、
ちょっと気を緩めると、ブログも空白になってしまいます。
ここは私の思い発信の場でもありますが、言葉の鍛錬の場でもあります。
カンを失わないための軽いエチュードの場合もあるし、本腰入れて
論理と感性とのバランス取りを試みてみることもあります。
今日、神田明神下のメンズ和服の店に、仕立て上がった
着物を受け取りに行ったら、界隈は祭りの神輿と笛太鼓で
湧き立ち、店にたどり着くのも難渋するほどの人出でした。
夜来の雨も上がり、曇天ではありましたが祭りの活気は「陽」で
明るく華やいでいます。
神輿を担ぐ若者たちを見ていると、これある限り日本はまだ
大丈夫だと、それは理屈にもならないのですが日本人の血に
脈打ち流れ続けているDNAを信じたくなるのが、祭りの場なのでした。
近くまで来ると、神田明神さんにお参りすることもあったのですが、
最近余り足を向けなくなりました。神官さんのお一人が韓国風挨拶
コンスの形をなさっているのを画像で見かけて以来、何となく・・・・
全員がなさっているわけでもないだろうし、もとより明神さんの
責任でもないので・・・・・気持ちが落ち着いたら、またご挨拶に上がるかも
しれません。
仕立て上がった着物は、江戸時代の絵師伊藤若冲(じゃくちゅう)の
絵柄をそのまま反物にしたものです。
蜘蛛の巣と蜘蛛、蝶など、いきとし生けるものたち全てに
まなざしを注いだ絵師の思いが伝わるようで、しかしそれだけに
個性が強すぎて、そう何度も着られるものではないなぁと
昨年から二の足を踏んでいたのですが、やはり気になってここまで
「好き」が持続するなら、持っておこうと思いきったのでした。
念願の「雪之丞変化」を観てきました。
名品です。市川昆美学の極み。
長谷川一夫、山本富士子、若尾文子、市川雷蔵、勝新太郎、中村雁治郎、市川中車、毛利菊枝と今にしてみれば、奇跡の配役陣です。
山本富士子さんと、若尾文子さんの美しさは目をはじくようでした。
この頃の銀幕女優さんの、美のスケールは桁違いです。
時代物の所作も勉強になるし、着物の着付け、所作にも目を凝らして
いました。
富士子さんには、思いがけず数年前お会いしました。私のことを、テレビで
見知っていてくださったことに、たいそう驚きまた嬉しくもあった・・・・というのは
当時の映画スターというのは雲の上の人だったからです。
市川崑さんの「細雪」への出演オファーを富士子さんはお断りになった、と
近くにいる人に聞き、ひとかたならず残念でした。
結局、長女役は岸恵子、次女が佐久間良子、そして、吉永小百合、古手川祐子と続きます。
皆さん、関西ではない中、富士子さんだけが大阪生まれ、京都でも過ごされて正確な大阪弁、それも上流の言葉を音声化できたのに。それに着物にも幼少期より馴染んでいらっしゃり、これほどうってつけの女優さんが、なぜ出演をお断りになったのか・・・・・・。
あるいは、スクリーンでのアップを厭われたかとも思えるのです。私がお会いした数年前ですら美女でいらしたので細雪撮影当時の富士子さんならなおのこと、とこちらは思うのですが、雪之丞変化でこの世のものならぬ完璧な美貌を拝見すると、ご本人の美意識はそれを許さなかったかとも思われるのです。
ご本人も細雪をご覧になって、出演を辞退されたことを悔やまれたということですが、私も無念です。お出になられていれば、その後の映画出演にも連なっただろうし、テレビでも大河などうってつけでしょう。
しかし、もしご自身の美意識から出たことならはたで、とやかく言うことでもないでしょう。
岸恵子さんは、素晴らしい女優さんで仕事をご一緒させて頂きその2作品とも賞を得て相性のいい方です。ご本人の電話番号を知っているほどには、個人的に親しくもあり・・・・
細雪の長女役も好評で、もし一方に山本富士子さんがいらっしゃらなければ、私も納得したのですが・・・
やはりパリの雰囲気がただよい、着物のまとい方も普段なら素敵な感性だと賛嘆するところ、谷崎ワールドの住人ではいらっしゃらない・・・・・というのがごく率直な感想です。
岸さんのお若い頃の写真を拝見しましたが、息を呑む美しさです。
それに当時の女優さんには珍しく、足がすっきりと美しい方です。
私が最後にお会いした時、七十の半ばに達していらしたと思うのですが
その若さは端的に言えば、まだ恋愛オンタイム。
恋をしている、ともし告げられてもすんなり納得できる、そんな若さ
なんでした。
帽子をかぶっていらっしゃり、脱いだ時の髪を気にされて「ずっと、かぶってたから、ぺったんこ」と、気にされていてそういう意味でも若くある方でした。
現在84歳。電話すれば、あの独特の声を拝聴出来るのですが、恐れ多くて遠慮しています。
富士子さん85歳。
男優で最後まで若く美貌を保っていらしたのは、池部良さんでしたか。
今の男優も女優も、80歳が想像できません。
奇跡的な美や若さの保ちかたが、価値観である時代でもないのかもしれません。
美輪明宏さんが今年82歳になられるはずです。
秋にまたコンサートの楽屋でお目にかかりますが、90歳までは、
願わくば、ステージに立っていて頂きたいと思います。
美輪さんも自身に厳しくある方なので、声に陰りが出たり、
動きが鈍くなったら、さっと退かれるだろうと思われ、毎年
緞帳が上がった瞬間、衰えを見ることになるのではないかと、
一瞬脳裏をよぎります。
毎度、衰えるどころかパワーアップさえなさっていることに
驚嘆する、というその繰り返しなのですが。
・・・・・・・伊藤若冲といえば、さっき何気なくテレビを付けたら、見たような絵画が映っていて、よもやと思ったのですが、まさしく伊藤若冲の絵。このてのシンクロは私には多いのですが。
90歳の寿司職人とその後を追う、老天ぷら職人とのドキュメンタリーでしたが、
これもまた老いて極める花、というごとき内容で途中からでしたが、深々とした思いで最後まで見たのでした。
そのドキュメントの中で紹介された伊藤若冲の絵は、羽の一枚をかまきりにもがれた蝶が、それでも必死に飛んでいる姿を描いていて、老天ぷら職人は、老いて手が自在に動けなくなりくじけそうになっている寿司職人を励ますために若冲のその絵を見せたのかもしれません。
結局、老寿司職人は老いたら老いたなりの握り方がある、というところに悟達して番組は終わりました。
伊藤若冲の絵を、ドビー織りに染め抜いたものです。
江戸の絵師なのに、感性が現代(今)です。
*ドビー織=織り糸で柄を出した織物。
平織に別の糸で織り込み柄や縞を出したものが多く、
光沢を帯びている。
土曜日に、「わが家」の竹園監督と、制作会社MMJの布施さんと会食で、
その時、珍しく黒い着物に黒い羽織、白い帯にグレーの羽織紐、白い襟巻、と
モノトーンを、新鮮に感じました。
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