小説版の「わが家」で描写した、ひのきの一枚板のカウンターがある店に
昼食を摂りに行って来た。
ふぐ料理を商うが、昼間はうなぎである。
一度わざと時間帯を外して行ったのだが、遅すぎてもう火を落としたと言われ、
今度は用心して、12時前に赴いたのにひのき一枚板のカウンターはもう
スーツ姿が鈴なり。オフィス街の人々であろう。
「二階でご相席どうぞ」
と言われ、急勾配の狭い階段を手すりにすがりながら上がったのだが、相席は
先客一組(お二人)と顔突き合わす狭さであり、お相手にも
ご迷惑だろうし、遠慮して階下に降りた。
「12時半にいらしたら、作っておきます」
女将さんに言われ、珈琲ショップで時間を潰し改めて出向いたら、
先ほどの鈴なりが、潮の引くようにいなくなっていた。
11時半開店だが、大体皆さんその前に現れるそうである。
うな重は、ふっくらと美味であったがそれ以上に感動したのは
山椒である。
ひょうたん型の容器の栓を外した途端、鋭角のイメージで芳香が四方八方へと
ピチピチと飛び散り、香りが生き物めいていた。
香りの漂う範囲がこんなにも広い山椒に初めて遭遇した。
次回、山椒はどこで仕入れているのか、聞いてみよう。