村川絵梨ちゃんが出ている芝居を観に、池袋の東京芸術劇場に出かけました。
鄭義信氏の作・演出です。
世評高い「焼肉ドラゴン」は見逃しているのですが、その後「パーマ屋スミレ」「たとえば野に咲く花のように」を
拝見、その作劇術の力強さに感服しているので新作「すべての四月のために」は期待が大きかったのですが、
今回は残念ながら空振り・・・・でした。
テーマ性が表に出過ぎていて、笑わせようとする大仰な芝居が空回りしている印象です。
村川絵梨ちゃんは、元気に良い芝居をしていたし、主演の森田剛くんもよかったです。麻実れいさんの
芸達者にも驚かされました。
森田くんにはまだV6が世の中に出る前、会ったことがあります。
ヒガシくんのところに、ちゃんこ鍋に呼ばれてその席に挨拶に来てくれたのが
岡田准一くんや森田くんたちのグループでした。
鄭義信氏は在日の作家さんですが、その作風は1950年代から1970年前後までの、在日コリアンの家族を核に、色濃い人間模様を描くのみで、とりわけ反日性のある作家ではありません。
ただ、今回の作品は第2次大戦下の、朝鮮半島近くに浮かぶ島、そこで床屋を営む一家の物語で、日韓併合が負の視座からしか描かれてないことが、気になりました。
日韓併合は、国際法上問題があったわけではなく、韓国側からの要請もあり、また日本にとっては国防上の
必要性にかられた「合邦」でした。植民地化ともしするなら、世界の歴史でも稀有の「優良」植民地化です。
植民地の定義は、搾取ですが日本が行ったのは逆であり、国から持ち出しで朝鮮のインフラを整え、病院や学校を作り、農作の指導にあたり、これは植民地化の定義には収まらぬでしょう。
韓国近代化へのワンステップとして、日韓併合は必然でした。むしろその後の展開を考えると、傷を負ったのは日本です。
むろん併合下で、朝鮮の人々が不本意の思いを味わった個々事例はあるでしょうが、歴史は俯瞰で見るべきものです。
鄭さんの新作は、日韓併合による負の現象のみ見て、朝鮮にとって大きな益であった部分への視線が欠落していたように思います。
鄭さんが政治劇を書いたわけでもなく、反日プロパガンダをなさったわけでもなく
ただ日韓併合家の朝鮮人の一家と、日本の軍人とを描いたに過ぎず、政治的反感の意図があるわけではないのですが、日本人としての私の感想を述べるなら、日韓併合を被害者としての一方的観点だけで描かれるのには、抵抗があります。
繰り返しますが、今回は成功作とは言い難いにせよ、鄭義信氏は傑出した劇作家です。
誤変換他、後ほど。