旧知の劇作家・演出家である池田政之さんの作・演出「やっとことっちゃ うんとこな」を見に、六本木の俳優座劇場へ。
これも旧知である俳優の川端槇ニさんが主宰する劇団NLTの公演です。
私はプロとして見物客としてはすれっからしで、めったに素直に笑ったり
泣いたりできないのですが、この作品は抱腹絶倒でした。掛け値なしの上出来喜劇。
川端さんの老女形の、よれよれしたそれでも女形の誇りを胸に秘めて
毅然とした哀愁とおかしみ・・・・・絶品でした。
劇中劇に歌舞伎を入れ込んだ意欲作でもあります。
知己が関わっているからということではなく、自信を持って
お薦めします。
https://www.confetti-web.com/detail.php?tid=48001
劇団NLTは文学座が、その中国寄り路線に反発したメンバーが
脱退して作った劇団です。
三島由紀夫、賀原夏子、丹阿弥谷津子氏、矢代静一氏らが
メンバーで、この時期の三島作「サド侯爵夫人」を私は見ていて
これは演劇史に残るであろう名品でした。杉村春子さんの
「欲望という名の電車」と共に、一つの演劇場の奇跡として
私の脳裏にはあります。もう一つひとまとめに奇跡を上げるとすれば
美輪明宏さんの「双頭の鷲」「黒蜥蜴」「毛皮のマリー」の
3作品でしょうか。
「サド公爵夫人」は公爵に関わる女たちだけで延々と公爵について語り
公爵は現れないまま、公爵像が自ずと浮かび上がる、という
構成で巧みです。
NLTはまた作品の上演路線への意見の食い違いから三島さんらが
離脱「浪漫劇場」を作るのですが、三島さんの自決で
空中分解しました。
NLTは賀原さんの秘蔵っ子だった川端さんが引き継ぎ、50年の
命脈を保っています。離合集散の激しい演劇界で凄いことです。
コメディ専門の貴重な劇団です。