ある国家規模のイベントの役員を仰せつかり、さんざん
逡巡して、人様のご意見を伺ったりなどして、
結局お引き受けしたのだったが、このほどそれに関する
文章を書いてくれという依頼で、これは身の丈に
余るので応じない気でいたら、ある方に「なぜ」と
問われ、歯に衣着せずにもの言うタイプなので、
慎重を要するそのての文章が不得手なのだと
答えたら、「そういう大人の分別で書く文章も
芸のうちでしょう、あなたもプロなんだから」
と言われ、生憎大人の分別の持ち合わせは微量なのだが、
「芸のうち」が腹にこたえ、結局書くことに
したのだった。
下書き程度の文章は思いの外さらさらと書けたのだが
上滑りの美辞麗句に走り過ぎていぬかと思われ、
しかし本音を入れればいいということでもなく「大人」は場により当然、
言葉の温度も質も変えねばならない。日頃、政治家の語彙とトークの貧弱さを
あげつらっている身としてはここは背伸びしても
「大人」にならねばならぬ。今はいい修業の場を与えて
頂いたと思っている。
音楽家やダンサー、アスリートが日々の訓練を怠らぬよう、文章も
日々の研鑽が必要なのだ。