ジョンベネちゃん殺人事件が未解決であることが、
ずっと心の中に澱になってわだかまっていた。
事件の悲惨さと、美少女の不可解な死を巡る状況が
複雑だったこともあるが、もう一つ私の家を
訪れたアメリカの大学教授が事件のあった
コロラド州ボールダーの人だったからだ。
私が当時書いた「同窓会」というドラマについて
アメリカで論文を発表した教授であり、わざわざ
アメリカから拙宅を訪ねて来てくださったので
話題は主に作品のことであったが、私がジョンベネちゃんの
事件について、地元の人なら何か知っているかと
質問したことがある。
このほど容疑者としてその名が浮上していた54歳の男が
友人に殺害を打ち明ける手紙を友人に送っていたとかで、
どうやら犯人であるらしいが、しかし手紙での記述を
鵜呑みには出来ないのだろうし、いまだ真実は
闇の中である。
ジョンベネちゃん事件のその後報道をきっかけに
「同窓会」を書いた当時のことを、思い出している。
毀誉褒貶、世間を騒がせた作品で私自身も
写真誌の取材対象となり、私の写真がでかでかと掲載されていたのを見たと
電話で知らせて来たのは山口達也くんだった。
作品をめぐって、東京大学でセミナーを開いてくださったのが、
当時の上野千鶴子教授であり、その研究室に招いて頂いたり、
その後教授とは何度か書簡のやりとりがあり(流麗な書き文字であった)、
それもいつしか絶えた頃私の思考の変化もあり、教授とは政治的立ち位置が
基本で枝分かれした。政治的思想が異なるからといって、それで私は
お付き合いを止めるタイプの人間ではないが、
上野さんとは単にご縁が淡かっただけである。