ジンジンこと白洲迅くんが出ているドラマ「ゴクドルズ」の
オンエア日が関西と関東圏では違うので、今夜だなと
眠いのを無理に起きて楽しみにしていたら、
いっこうに始まらない。午前0時を過ぎた深夜ドラマの
常で、広報された当日の日付なのか翌日になってからの
放送なのか、判断が付きかねるのだ。
放送を待っている間に、各局をザッピングしていたら、
黒人が多く出ている映画をやっていて、何やら
「人種問題」ふうのテーマらしく、苦手で
すぐ他へ切り替えたのだが、「ゴクドルズ」がいっこうに
始まらず、他に見たい番組もなく目が冴えてしまっていたので
黒人俳優が多く出ているその映画を苦手だなあ、と何となく
見始めたのだが、10分もたたぬうちのめり込んでいた。
タイトルが「大統領執事の涙」という(涙は余計だと思うが)映画だった。
米国の第34代大統領アイゼンハワーにはじまり、ケネディ、ジョンソン、ニクソン、 フォード、カーター、そしてレーガンまで、7人の大統領にホワイトハウスで仕えた黒人執事の半生を描いた映画というのが触れ込みで、実話に基づくらしい。
息子二人のうち長男は、黒人差別反対運動の騎手となり次男はヴェトナム戦争で死亡。長男はホワイトハウスで白人の代表格である大統領に仕え、長男は
国に盾をつき、次男は愛国心で戦地に命を散らす。
極めて政治的意図が明確な構図だが、映画は上手く昇華していて構図が気にならない。
そして妻との葛藤、愛情。妻の急死とドラマは息継ぐ間もなく展開し、ラストはホワイトハウスをリタイアした父親が息子の率いるデモに参加、息子との和解で終わる。
最初のほうを見ていないので、会員制の映画サイトで見るつもりだ。期待もせず、また積極的に見ようとは思わないたぐいの映画なのだが、深夜の
ザッピングで思わぬ拾い物をした。
昨日述べた内館牧子の小説「すぐ死ぬんだから」で、書き漏らしたが
老いるままに緩んでいくことの醜さは、無論男にも言及されていて、
手厳しい。気をつけねば男は女よりもなお臭く汚くなるのである。
身なりへの気の張りは人生への気の張りであろう。
男は老けると婆さん顔になり女は爺さん顔になるという、小説の一くだりにも噴いた。
それも事実だが、しかし美貌の女が年を重ねても美貌の原型を留めていることが多いのに、男の劣化の凄まじいこと。かつて、爽やかな美青年としてチョコレートのCMをやっていた俳優の凋落の凄さ・・・などを見ていると、今絶頂期にいるあの彼もこの彼も、とつい40年後の顔を想像してみたりして、実はそれがある種、興が深くもある。
花は瞬きの間に枯れるのだ。
枯れるからつかの間のきれいが、胸を打つ。
顔が爺さん顔、婆さん顔なのに髪の毛が(染めて)カラスの濡れ羽色、と小説は辛辣だが、確かにテレビで見かける。染めにも気を配らないと、かえって老いの侘しさと滑稽さがにじみ出てしまう。
小説は、ある女優さんが電話での会話の折に
話題にしたのでふと読んでみたのであり
映画は他のドラマを見るつもりが、成り行きでなにげなく見た、
いわば「拾い物」である。
映画の中で、どの大統領であったか便秘に苦しみ、トイレの
ドアを開け放したまま、ドアの前には側近数名と執事がいる、
という描写も多分、事実であり面白かった。その大統領は
黒人執事に「出ない。プルーンジュースをくれ」と、
ズボンをずり落とし便座に座ったまま頼むのだ。
黒人執事たちの黙々たる働きが、やがてバラク・オバマを産んだ、という
観点から映画は綴られ、リタイアしていた主人公はオバマから
ホワイトハウスにゲストとして招かれる。
ここがアメリカ的だと思う。代々の大統領に仕えた執事を
顕彰する感性は、アメリカのいい部分であろう。