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日本語の達人の逝去を惜しむ

作家、田辺聖子さんの近況を余り聞かない、と思っていたのだが
訃報をニュースで知った。

まことに惜しい「日本語の達人」のこの世からのご卒業である。

三島由紀夫のようなきらびやかな日本語ではないので、文化勲章の
叙勲などで、業績への讃えはあったもののその達意の
文章が取り立てて称揚されることはなかったのだが、この方は
古典の教養に根ざす詩嚢からこぼれ落ちるほどの有り余る語彙を有しつつ、
しかし敢えてそれらを使うのを最小限に、平易に綴られた。

ベッドシーンを日常言語で、しかし格調高く官能的に描かれ、
凡手の、よくなし得ることではない。ある雰囲気を
有した恋愛小説はフランソワーズ・サガンを思わせ、
御本人も影響を受けたと語られていた。

日本はまた一人、日本語の防人を失った。後、生きていらっしゃるのは
何人か・・・・、いや、いるのか、と思わせる心細い現状である。

豊かな日本語を私たちに残してくださったその業績を
讃えつつ感謝の思いと共に、お見送りしたい。

田辺聖子さん、ありがとうございました。

 


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