俳優さんに関して、この人は大きくなるよ、と「予言」してまだ外したことがない。
渡辺謙さんもそのお一人だった。まだ無名の頃、拙作のドラマに
ご出演願い、本読みの席でお目にかかり、「あ、大物になるぞ」と思い、
内館牧子に「清潔感とスケール感が半端ない」と
何気なく喋ったら、渡辺謙さんにその後会ったらしく、井沢満が
こんなこと言ってたよ、と伝えたそうで、そしたら渡辺さんは
「いやぁ」としきりに照れていたと聞いた。
その後、どちらが先に出したのか、何の用だったのか忘れたが
書簡のやりとりがあった。
メールもファックスもない時代で、お互い手書きの封書である。
整然ときれいな文字を書く人だった。
その後病気という苦難を経て、そこをくぐり抜けられてから
徐々に大きくなって行かれた。
ある日私のメールボックスに「ラスト侍・配役候補」という
メールが入っていて、ズラリと俳優名が並んでいて、その中に
渡辺謙さんのお名前があった。
何だろ、と思っていたら「送信間違えました。見なかったことにしてください!」と
メールが来て、「ラストサムライ」の日本側プロデユーサーからだった。
ラストサムライは試写室で見た。
その段階では候補であったが、オーディションを受けられたのだろうか、
役を捉まれ、一気にハリウッドの階段を駆け上がられて、「王様と私」では
ブロードウェイに進出、トニー賞にノミネートまでされた。
奥様の南果歩さんとも、仕事でご一緒したことがあるが、心遣いの
細やかな方だった。お二人並んで、トニー賞受賞の華やかな席に
いる姿をテレビの画面でお見かけした。
真田広之さんとは、ご縁がないままだが墨田区の小さな劇場に芝居を
観に行ったらロビーにいらして、私をご存知だったらしく、会釈をくださった。
真田さんもハリウッドで立派に位置を占められた。
さて突然コン・ユさんである。私がその存在を知った時にはすでに
ビッグでいらした。だから「予言」対象ではないのだが、その後
素朴に感じたのは「ハリウッドサイズ」のスケール感の持ち主だと
いうことである。英語も何かの映画でちらっと聞いたが、大丈夫。
ただ、ハリウッドに関しては縁があるかないか。その時の
企画によりけりで、ちょうどハマる役に巡りあうかどうか、
運の領域である。
何となく勘だが、コン・ユさんもハリウッド意識はしているように感じる。
もしハリウッドから、良い仕事のオファーが40歳前後までに
来たらハリウッドでも大輪に咲くことの出来る人だと
私は思っている。
私個人とご縁のある人かどうかは、全く解らない。
ただ気になっていると、20年後にその人とテレビに対談で
出ていたりするので、先のことは解らない。
国内の人だけではなく、レスリー・チャンという香港の役者さんが
しきりに気になっていたら、すらっとお会いするチャンスに恵まれた。
その後まもなく自死を遂げられたのだったが。不思議な方だった、
いろんな意味で。レスリーも、ハリウッドは意識して英語にも自信が
あったようだが、自ら去ってしまった。