真冬並みの寒さだと天気予報に脅されて重装備で外出したら、
さほどもでなく、コート無しの人さえ歩いていた。
それにしても、カシミアのブランケットは便利でコートほど
重たくないし、ショールにして肩から腰に、まとえば
軽く温かい。
ある女優さんが、「**さん、衣装のショールが重たいってカシミアのを
羽織ってらっしゃるのよ。客席から見ても質感が違うのがわかるのに」
と、そう同業のスターさんを批判していたが、日本の古い時代の
それも地方の話なので、確かにカシミアはおかしい。
こんな日は高嶋政宏くんを思い出す。
ニューヨークから電話があって「今日セントラルパークを散歩してきました。
雪が降り積もって良い風情でした」と声が弾んでいて「明日帰りますが、
おみやげは何がいいですか?」
そう訊くので「セントラルパークの雪」と私は答え彼は「解りました」と
即答だった。「え?」でもなく、笑いもせず当たり前のように「はい」と
応じたのだった。
帰国後、恵比寿のレストランで彼が私に差し出したのは
白いカシミアのマフラーで、手にするとあわあわと、雪の感触だった。
追記 原節子さんがお亡くなりになりました。
私の世代でもすでに遠いお方でしたが、圧倒的な存在感で
どうしていらっしゃるかと時々思い出していました。
茅ヶ崎の上原謙さんの、敷地に体育館のある豪邸を訪ねた折、
当時の奥様のところに、体操にいらしていたと聞いたことがあります。
これで、田中絹代さん、山田五十鈴さんと大女優が去り、私の昭和が完璧に
終焉の時を迎えたという感慨があります。
もう時代は原節子さんレベルの伝説の大女優を産みません。
大衆の夢が神格のスターを育て上げますが、人々は
もう夢を見ません。
ご冥福をお祈りします。