私がはっきりものを言い過ぎる、あるいは真実を語り過ぎるとして
あちこちから、ご心配を頂き・・・・しかし本当のことを告げると
心配される世の中って、一体何なのだ? と索然とする。
どうも性分で、言うなら全部言ってしまう、言わぬならいっそ何も言わぬと
極端に走りがちな性格も困ったものではある。これでも控えめに、実に
控えめに語っているので、お腹に溜まることおびただしい。
しかし世相や外交を語ると刺々しくならざるを得ず、知らんぷりして
のんきなことを書いているほうが精神状態はいい。......のかな?
私は、あれこれ知り過ぎてしまったようだ。
・・・・・とまた唐突に。
小出しにごくごく僅かに書いても心配されるのだから、全部吐き出したら
大変なんだろうな、きっと。
というわけで、話題一転。
市川崑監督の、「黒い十人の女」というモノクロ映画の時代の作品を
ずっと見たいと思っていたのだが、この間やっと見た。
山本富士子さんと、岸恵子さんが出ていらしてお二人が美しいのは
十分に知っていたのだが、改めてその美貌の凄みに一驚した。
若さも美貌も頂点にある頃。本当にこの世のものならず美しい。
神の造形物としか言いようがない。
この仕事をしている特権でお二人には、じかにお会いしている。
岸さんとは仕事のご縁で、それなりに長いお付き合い。
始終お会いするような間柄ではないが、食事を共にさせていただいたり、
岸さんが持っていらした対談番組に呼んで頂いたこともある。
話が弾むということで、一回の出演予定が二回になった。感性が
とても合う方なのだ。岸さんはエキセントリックだと言われているが、
ということは、私もエキセントリックなのか?・・・・そうだ、とあちこちで
声が聴こえる。本人は至って常識円満具足である、と思い込んでいるのだが?
・・・・・吹き出す人が何人か。ジャニーズ事務所のメリーさんから
私は「わがままん」と呼ばれていた。周囲が気を使いまくっているのに、
私は平然と気づいていず、わがままをこくのだそうだ。
そうかい?・・・・・全く自覚なし。
山本富士子さんは、楽屋見舞いに行く人についてお邪魔して
一度お目にかかっただけのお方である。
驚いたことに私をご存知だった。テレビで見てくださっていたらしい。
当時のスター女優さんは雲の彼方の星であり、その星が
人間に過ぎない私を知ってくださっていた感激、ありがたさとでも
言おうか。
あの当時のスターさんの大きさと輝きと言ったら、拝みたいほどなのだった。
山本さんのお姿を私はどれだけ銀幕で見続けたことだろう。
声も台詞回しも特有で、記憶に鮮明である。
とりわけ和服を召された時の、艶やかさ。
目を弾くような美女がいなくなった。おそらく山本さんや岸さんが
その最後の女優さんなのだろう。
ハリウッドでも、スター女優の基準が変わって久しい。
私は自分と同じレベルの顔をわざわざスクリーンで拡大して
見てもつまらぬと思うほうなので、ここ数十年味気ない。
その分、男が美しくなったのはこれはどういうことなのだろう。
女にしても美女で通る、端正な容貌の俳優さんが増えて来た。
女優さんを、ハリウッド・マジックによる照明とメークで、女神のように美しく美しく
仕上げていた時代はもう、遠い。人が女優に抜きん出た美貌を求めなくなった。
なぜです?