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Channel: 井沢満ブログ
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たけしワールド

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長いこと、私はビートたけしさんが苦手でした。生理的になぜだか
ダメだったのです。

かといって、その能力を知らぬ訳ではなくある和田勉さんと「夜明け前」で
組んだ時、私は青山半蔵役はビートたけしさんでお願いします、と
申し上げたのです。たけしさんのスケジュールが取れず、実現は
しませんでしたが、役柄によっては欲しい方ではありました。

ある実在の人物を主人公に、ビートたけしさん主演でとお話を某局から頂いた時はご辞退してしまいましたが。

かくして、随分長いこと・・・・・・漫才のビートたけしさんの頃から私は
苦手な人であり続けていました。だから映画も観なかったのです。

それがつい、一ヶ月ほど前の深夜、落語をやっているたけしさんが
テレビに映し出され、チャンネルを反射的に変えようとしたのですが、
珍しいのでなんとなくそのまま見続けてしまい、そのうちのめりこんでいました。

私の不得手なおちゃらけた、たけしさんの姿はどこにもなく真摯なほどに古典落語に取り組んでいらっしゃる姿があり、驚きまた打たれたのです。

談志師匠の、たけしさんは門下生だったのですね。

それまでの抵抗感が失せると私は早速たけし映画を見始めました。
まず国際的にも評価の高かった「HANA-BI」。そのみずみずしさと
自作絵画の感性にほとほと驚き、次に「菊次郎の夏」を、と
次々たけし映画を今見始めているところです。

それをお世話になっている制作会社の人に話したら、たけしさんは
立川談志さん門下だとのこと。それをベースにしたドラマ「赤めだか」の
DVDを送ってくださり、さっき見たのですがこれも秀作で、二宮くんの
演技力にも驚き、またたけしさんのとりわけ黙っているシーンの
表情の突き抜けた凄みにもやっと、私は感応したのでした。

ドラマには、仕事でお付き合いのあったラサール石井さんが出ていたり、
また志の輔さんは登場しませんが、香川俊之さんが演じておられ、
私は志の輔さん司会のクイズ番組に出演したことがあり・・・・・
というふうで、それとない親近感も感じながら上出来のドラマを
食い入るように見たのでした。

それ以上にたけしさんが演じる談志さんが、私がかつて感じていた
怖さと重ねながら見ていました。

談志さんがいらっしゃるある番組に一人でゲストとして呼ばれたことは
以前、記しました。その時、居並ぶ常連の方々で一番怖かったのが
談志師匠なのです。ついで中尾彬さん。
このお二人の視線はごまかせない。斬られる覚悟で、出たのでした。

ところが、テレビで延々無言はご法度なのですが、談志師匠は私を
見据えていたきり終始無言。斬られずに終わり、中尾さんが番組収録後に
つかつかと寄ってきて、身構えた私に無言でこれも握手の手を
差し出されたことも書きました。

談志師匠のその時の無言は私の発言への肯定であったと
いまだに思い込んでいるのです。

しかし、私には恐い人でした。もともと若い頃から生意気なたちで
誰かを恐れるということは滅多にないのですが、今の
私にはたけしさんが、こわい人になりました。

多分本能的に才能への畏怖なのだと思います。

同じく恐れながら談志師匠が恋しいのです。
ドラマを見ながらそういえば、私は談志師匠と並び称され、ドラマでもその名が出た米朝師匠と酒席で1,2時間ご一緒したことがあります。初めて書いたテレビ小説でご出演願っていたので。(語り手をやっていただいてたのだったか?)
当時はすごい方という認識も無く、ヘラヘラと私は師匠とお話していたのですが、今思うと冷や汗が出ます。対等にお話してくださった記憶があります。

若さというものは薄っぺらいもので、恐れを知らないから米朝師匠と至近に向き合って喋るという僥倖に恵まれながら、何かを得ようという志がないので、それっきり貴重な時間を反故にしてしまいました。傲慢な若さとはバカさです。

鈴木清順先生には、先生にご出演願ったドラマのロケに付き合った時お近づきになりお酒をご一緒させていただいたご縁で、その後もお体を悪くされるまで、お付き合いを願いました。

書くはしからご縁を思い出すのですが・・・・
中尾彬さんはたけしさん映画「龍三と七人の子分たち」でスクリーンの上で超久々の再開。
(大昔仕事はご一緒したことがあります)

龍三役の藤竜也さんには何度かお声をかけているのですがスケジュールが折り合わず、
(最近では「龍三と七人の子分たち」とかち合ってダメでした)

藤さんには、駒沢公園で遭遇したことがあります。藤さんは早足でコースを歩かれて足を鍛えていらっしゃる様子でしたが、私が連れていた愛犬の「ちょんきち」に視線を当てたまま、とろけるような表情で、ああお好きなんだなぁ・・・・と。
私には目もくれていただけませんで、お仕事をご一緒することがあれば
その時のことを笑い話にしようと思っているのですが、まだ御縁が生じません。

「龍三と・・・・」に出演の近藤正臣さんとは、大昔に仕事をご一緒したことがあります。昔も昔、近藤さんがまだアイドルっぽくチョコレートのCMなんか、爽やかにやっていらっしゃる頃で、時は過ぎた・・・としみじみ思わざるをえません。

たけし映画「キッズ・リターン」に出た安藤政信くんは、無名の頃私が
書いていた連続ドラマに、チョイ役で出ていて、ところがオーラが半端無く
私はセリフをどんどん増やして行ったのですが、局から
「無名の子にセリフを余り書かないでください」と言われ、
元気な頃なら、たけしさんばりに「ばかやろ、こいつは才能があるから、
セリフは書かねばならねーんだよ、すっこんでな」と啖呵の一つも
切ったところですが、過密スケジュールでくたびれ果てている頃、
はいはい、解ったよ、と仏頂面でセリフを削ったのですが、その直後に
安藤政信くんはたけし映画で主役デビュー、その後の活躍、それ見たことか、
ざまーみろ、とセリフ削りを要求してきた局のましなほうの人に
言ったのでした。

打ち上げのあと、タクシーが一緒だったのですが、そのことを安藤くんには
伝えていません。

私は新人の可能性を見るにまだ外したことがありません。

たけし映画の話が、自慢話で終わっちゃしょうがない。お後がよろしいようで。


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