「生前退位」にまつわる識者の見解が、いったんそれぞれに
出揃ったと言ってもよろしいのでしょうか。
虚心に賛成反対のご意見に耳を傾けた結果、わたくしはやはり
渡部昇一氏や、櫻井よしこ氏の言い分に理が通っていると思います。
賛成派も、そのうち特措法でという限定付きの賛意の人を除くと、
数字は反対派のほうが多いですが、選挙ではないので数字は
目安でしかありません。
賛成派の方の言い分が、どうも理解しにくいというよりも、
論理として成立していないことが気になります。
たとえば「高齢化社会へ向けて」という切り口で述べたご本人も
たいそう高齢なお方ですが、「高齢化社会」というのはわたくしども
一般国民の世界のことであり、そこへ天皇陛下を持ち出すのは
基本で筋違いでしょう。
天皇というのは「ご存在」であり「職域」ではありません。
だから、退くという考え方が基本で誤りです。
また「特措法」というのは、単に「悪しき前例」を作ることだと
わたくしは認識しています。
こういう意見がまた世論を誘導して「お休みになって頂きたい」として
生前退位賛成が80%以上という数値になるのでしょうが、そもそも
お疲れになることをよしとしての、生前退位反対論ではありません。
天皇陛下ご高齢→いつまでもお働き願うのはお気の毒
こういう事では全くないのですが、そう思い込まされているのか、
考えずただ反射的にそう回答しているのか解りませんが、たとえ
寝たきりでいらしても、天皇陛下は天皇陛下でいらっしゃますよ、と
いうのが、長い間天皇というご存在の安定性を担保して参りました。
それをあたかも民間の役職のように、働けなくなったから
引退しますというのは、「お気持ち」としては十分解るにせよ、
皇室制度の根幹を曖昧にゆるくしかねない事柄です。
「象徴」というのは、安定して国民統合のシンボルであり「象徴として何かを具体的に語る、行動する」というのは違うように思います。
なすべきことは、さほどなく、最小限なさっていけないことがあるなら、政治発言。
それから国民が意見を二分している、どちらかに加担してしまうご意見を
述べられぬこと。
昭和大帝のあのイエスでもノーでもない茫洋となさった受け答えが模範です。
ご覧になるテレビ番組のことを訊かれてさえ、「テレビ局も競争が激しいようですので」とだけ答え、笑いを誘ってお答えはぼかすさまなど、至芸でした。
皇后陛下は尚更に穏やかな微笑で全てを、無言で静かに受け流されていらっしゃいました。
個人としての見解の表明など絶えてございませんでした。
現在、A級戦犯や五日市憲法への言及など、則を逸していらっしゃるように思われます。皇后陛下は単に象徴の妻であり、象徴そのものではございません。
社会問題と憲法、そして史観について多弁でいらっしゃることに違和感があります。
皇族とは、常に昭和の時代の天皇陛下と皇后陛下の曖昧模糊と、たゆたわれるような風情にあり、とわたくしなどは思っております。
天皇陛下が象徴としてのお仕事として考えられ、懸命にやられたことのいわゆる
「公務」のほとんどは義務ではありません。「おやりにならなくてもよいこと」です。
やらなくてもいい、というのは生前退位に対比しての言葉であり、貶めの意はありません。
なさるべきは、実にシンプルで祭祀と国事行為、これに尽きます。
これとて、どうしてもだめなら摂政にお預けになれば良いことです。
祭祀については、わたくしは不案内で、天皇親修に限るという
祭祀を、摂政がやれるものかどうか解りません。
もしやれぬなら、そここそ典範の改定が必要であり、また
祭祀を執り行う知力と健全な身体の持ち主でなければ、
摂政としては立てられない。
つまり次代天皇としては成立しない、ということです。
生前退位論について、目が奪われ肝心の皇室祭祀が疎かになっている現状を、誰も言いません。
枝葉で論じれば、権力のみ天皇より勝り身は自由な上皇というお立場で、
最近行われた、どうやら九条の会が関わっているらしいある組織へのご訪問がなされたと同じように、「私的ご旅行」という名の内実、莫大な国費を投じてのご旅行の行き先が韓国であった場合、その後発言には極度の慎重さが求められますが、「現役」ではないという気楽さで、後の歴史に刻まれる如きご発言がなされかねないことを憂慮するものです。
秋篠宮殿下のお誕生日談話で、天皇陛下のお言葉を肯定する如きご発言に、内心気落ちしている愛国保守の方もいらっしゃるようですが・・・・おそらく殿下は、質問を予期され事前に練りに練られた模範解答でお答えになられた、と
わたくしは感じています。
長い間お考えになられていた「お気持ちを述べられた」そのことに対して、(息子として)それは良かったと思う、と。しかしながらわたくしは、文書もテレビでのご発言も拝見しましたが、生前退位自体が良い、とは一言も仰ってはいらっしゃいません。注意深くお避けになられていて、同じく公務に関しても父上であらせられる天皇陛下のお考えになる公務については、批判がましいことは一切、おっしゃらず、かと言って全肯定なさっているかと言えば、そうでもない、という絶妙のお答えの仕方ではなかったかと、私はそのように拝見致しました。
天皇皇后両陛下、皇太子ご夫妻が文書での回答を定着された中、堂々とそして臨機応変に柔軟に記者の前で、ということはカメラの前で、つまりは国民の前で肉声でお答えになる秋篠宮殿下を好もしく拝見致しました。
紀子妃が常にさりげなく寄り添うお姿にも、安定感を感じます。
皇室は日本の家庭の雛形でもあらまほしいので、ご夫婦揃っての
お出ましが単純に嬉しいのです。それは取りも直さず、日本という国の
安定した姿にも見える・・・・・というのはわたくしだけの感じ方でしょうか。
誤変換他、文章の瑕疵は後ほど推敲致します。