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Channel: 井沢満ブログ
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聖母にはなれない

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児童虐待の報道が出るたび、胸が悪くなります。
一緒になった男が、自分の子ばかり可愛がり
女のほうの連れ子である幼女を虐待しているのを、
見て見ぬふり。女はわが子の痛みと恐怖より、
惚れた男を失うのがこわいのです。

女が、「母」であることより「女」であることを
選ぶのは、わたくしの暮らしの中でも見聞きし
浅ましい、悲しいことには思いますが非難する
気にはなれません。

上記は極端な形ですが、普通の人間に聖母であることを
望むのは過剰です。24時間べったり子育ての最も辛い最中、
耳元で原因不明に火のついたように泣き狂われては
愛しさがふいに憎しみとなる修羅は、多くが経験して
いることでしょう。睡眠不足でフラフラしながら、授乳、
オムツ替え、家事。
(こいつ、殺したろうか)と、これは原稿を書く
仕事をしている知人から聞いた言葉です。
ゆりかごに赤子を置き、足で揺らしながら彼女は
切迫する締切を前に原稿を書いていました。

むろん、このような修羅を経験せずなだらかに子育てを
終わる人たちもいます。それは僥倖です。
当たり前、ではありません。

子にしても親第一というわけでもありません。我が身第一。
長じるに連れ、我が身第一、伴侶と我が子が二番、三番目が
やっと親。

わたくしは、3度朝のテレビ小説を書きましたが、最初の
「いちばん太鼓」で描いた逸話があります。
ある学者が赤ん坊を抱いた猿を鉄板に置いての実験です。
その鉄板を徐々に熱していきます。
熱さにお母さん猿は、赤ん坊を抱いたままぴょんぴょん
飛び跳ねていますが、ついに耐えきれなくなると赤ん坊を
下に敷き、自分がその上に乗り熱さから逃れるのです。

むごい実験で、わたくしは実験結果よりもそんな実験をした
学者を唾棄しますが・・・・

母性の限界ですね。
最終的に、我が身がまずありきで、それから子供なのです。
人間のそれが限界というものです。
もし、人間の母子が焼ける鉄板に乗せられ、母親が自分を
下敷きに我が子をかばったとしたら、それはもはや
人間ではなく、菩薩になった、というべきでしょう。

こんなことを書くのは、母性に過剰に期待するのは期待するほうも、
されるほうも息苦しく自分を追い詰めるからです。

「あすきみ」では遥飛に託して、母親の牢獄から逃れられない
男の子を描きましたが、彼にアドバイスをすることがあるとすれば
お母さんを許す必要はない。まず母親を憎む自分を許しなさい、
ということと共に、母親を過剰に神聖化しなさんな、ということです。

母である前に人間であり、人間にはさまざまいて、完璧なのはいず
中には病んでいる者も。
聖母を理想に念頭に置くと、裏切られるよ、と。

淫乱な女がいるけれど、ひょっとしたら君の母親がそうかもしれないし、
盗癖があるかもしれないし。ひょっとしたらレズビアンかもしれないし。
理想化すると、お互いにきついから。母も、子も。
お互い、我が身第一の浅ましい人間だよ、というところから
スタートしたほうがいいよ、と。

こんな突き詰めたこと考えずに済む母子も世の中には大勢
いて、それはそれで幸せなこと。

母を憎むあなたへ、というタイトルで時々文章を書き、
母親に虐待された人たちの、気持ちの吐き出し場として
コメント欄を提供することがあります。

文字にして述べる、ということは状況の客観視でそれがまず、
第一歩。気が向いたら書いてください。
どんな、浅ましいことでも、詳細に。
「非公開希望」とタイトル欄に明記してくだされば、
わたくしだけが読ませていただきます。
開放という意味でなら大勢の人たちに読んでもらうほうが
いいし、また同じケースで苦しむ人への慰めともなりますが、
気の向くまま、いずれでも。

もう一度書きますが、あなたを精神的、物理的いずれにかかわらず
むごい仕打ちをした親を許す必要はありません。
そんなこと、出来ません。凡人には。許そうとあがくうち、
それが出来ない自分を憎むことのほうが、あなたの人生には
よくないです。

あんな親、憎んで当たり前、ともう棄てちゃってください。
それより、自分を許し開放してあげましょう。
親だからこう、子だからこうあらねばならない、というのは
幻想でしかありません。

子も親もお互い、煩悩まみれの浅ましい存在なのです。
それが、たまたまこの世で親子というポジションを
得ただけのこと。おそらくは何らかの学びのために。

許せるならそれにこしたことはないけれど、幼い頃は
全世界であった親から受けた否定は、全世界からの、宇宙からの
拒絶です。そんな人非人の仕打ちをした親なら、許す必要は
ありません。つばのひとつもひっかけて、とっとと去りなさい。
そして、自分を開放なさい。

許そうとする葛藤は、新たな憎しみをしか生みません。
無駄な試みはやめて、己を許して下さい。
まずは、それが第一歩。第一歩で、この人生を終えてしまうかも
しれないけれど、それはそれで。

あなたを親以上に認め、求めてくれる人にいつかめぐりあいますように。
親に疎んじられ、傷つけられたからといって、しあわせを
諦める必要はありません。

 

誤変換他、後ほど

 

 


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