しばらく顔を見ないと寂しくなる人がいて、三田佳子さんが
その数少ないお一人だ。
というわけで、先月食事をご一緒したばかりだが
昨夜も会食。大いに語り合い、そのうちお付きの
マネージャーさんより外から電話で、もう4時間が
経過していて、そろそろご帰還をとの催促だった。
この間も時間を忘れ、4時間半が経っていた。
飲みは私ばかりで日本酒のぬる燗2合、三田さんは
盃に二杯程度。
一度書いたことがあるが、日本は酒の温度にも細かい段階があり、
きれいな名前がつけられている。
「雪冷え」5℃
「花冷え」10℃
「涼冷え」15℃
以上が冷酒。
「冷や」20℃
冷やが常温。
以下が燗酒である。
「日向燗」30℃
「人肌燗」35℃
「ぬる燗」40℃
「上燗」45℃
「熱燗」50℃
「飛び切り燗」55℃
日本人として「雪冷え」と「飛び切り燗」の2語程度は心得ておきたい。
色彩も茶とグレーとに、濃淡と明度に応じて細かい名前がびっしり
つけられていて、日本人の繊細な感性に改めて驚嘆する。
伝統的な和食の時代には舌も、敏感であったと思われる。
土地の旬のものを濃厚な味付けなしに食していた時代だが、結局
それが健康維持にも叶っているようだ。
偉そうなことを書いているが、私もおそらく人肌燗とぬる燗の
区別はつかない。
明治維新期に、慌ただしく西欧文明を取り入れ、それは
致し方なかったことだが、やり過ぎた。今にして
思えば西欧の野蛮な”文明”まで識別なしに受け入れてしまい、
敗戦がそこに拍車をかけた。
昨今の言葉の貧困もまた、その一環であり内館牧子著、
「カネを積まれても使いたくない日本語」を読んだら
「頭の中の植民地化」という言葉があり、膝を打った。
私のかねがねの主張「日本語は国の防波堤」に通じる。