内田裕也さんと樹木希林さんの遺児である也哉子さんの姿をテレビで
拝見しながら「随分、大きくなったなぁ」と間の抜けた感想を
私が抱いたのは、御本人に会ったのがまだ少女時代であったからだ。
当時、大変な人気だった加勢大周くん(今で言うなら
竹内涼真くんだろうか)と食事の約束をして、その席にふと思いついて
樹木希林さんをお呼びした。
すると「娘がファンだから」と言って希林さんが連れてきたのが
也哉子さんだった。加勢くんからサインをしてもらって、
そのまま也哉子さんは去った。
「いやどうぞ、食事を一緒しましょう」と私は申し上げたのだが、
「それではけじめがつきませんから」と希林さんはご自身だけ
残り「あなたは帰りなさい」と也哉子さんを帰したのだった。
それ以前に、希林さんのお宅に伺った時、手土産代わりに
也哉子さんが着られそうな、キクチタケオのTシャツを
持って行ったのだが「あの子は好みがはっきりしているから、
どうかなあ」と、余り喜ばれず、普通ならお愛想で
「ありがとう」と言うところだが、希林さんは
その頃から希林さんだった。
なぜ内田裕也さんと別れないのか、訊いたわけでもないのに
希林さんは説明し、「あの人の骨は私が拾うの」と
おっしゃった。なぜ別れないのか、心情をうかがっても
私には解らなかった。
祐也さんは島田陽子さんのところに走っていた頃であり、
希林さんは「おい、国際女優だぞ」と祐也さんが自慢しているのだと、
面白げな口調で話してくださった。
整然と片付けられ余分なものをいっさい排した
まったく生活臭のない、塵一つ落ちていない室内であった。
希林さんは去り際の私に、旧い書見台を持たせてくださった。
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